厚生労働省は30日、2013年度の最低賃金引き上げの目安を決める委員会を開き、10円超の引き上げに向けて本格的な議論に入った。生活保護との逆転現象の解消やデフレ脱却を目指す政府の意向もあり、2桁上げは既定路線になりつつある。一方、中小企業の負担増や雇用減少を指摘する意見もある。委員会は8月初旬の妥結を目指す。

 最低賃金は時給で示し、現在は全国平均749円。デフレ脱却を目指す政府は経済界に大幅上げへの理解を求めている。

 労働側も大幅な引き上げを求める立場だ。委員も務める連合の須田孝総合労働局長は引き上げの重要性を「一昔前は最賃といえば学生のアルバイトや主婦の家計補助だったが、最賃で生計を立てる非正規労働者が増えた」と説明する。電気代や乳製品が足元で値上がりしていることも勘案するよう求めていく方針だ。

 政府や労働側の主張に対し、経済界は慎重な態度を崩していない。30日の委員会でも、地方の中小企業には安倍政権の経済政策の効果はまだ届いていないと主張した。日本総研の山田久チーフエコノミストは「企業が持続的に賃金を払うには生産性向上が必要だ。その支援も議論しないと、失業問題につながりかねない」と指摘する。

 一橋大学の川口大司教授と日本学術振興会の森悠子氏が共同で実施した07年から10年を対象にした実証研究では、最低賃金が10%上がると10代の雇用率が5ポイント下がることが明らかになっている。川口教授によると、「中小企業の合理化支援は労働から資本への代替を促し、低賃金労働者の雇用をさらに減少させる可能性がある」という。
(日本経済新聞)