[北京 3日 ロイター] 中国の公安当局は2日、警察が食品安全の取り締まりを行い、ネズミや小型哺乳類の肉を「羊肉」と偽って取引していた犯罪組織を摘発したと発表した。
取り締まりでは、ネズミやキツネなどの肉に添加物を加え、上海と江蘇省の市場で販売した容疑で1人が拘束された。犯罪組織に関与した疑いで63人が拘束され、同組織の2009年以来の取引額は1000万人民元(約1億6000万円)に上るとされている。
●ヤバい食品の凄まじい現実
『週刊文春』によると、日本には中国から年間400万トンの食糧が輸入されているという。
水産物や野菜、菓子、調味料などで、この中の多数の物品が日本の食品衛生法を違反している、というのが企画のキモ。特集では厚生労働省が摘発したリストをもとに、同誌編集部が独自調査したデータとして「活きうなぎ」「ネギトロ」のほか、「塩味えだまめ(冷凍)」など多種多様な食品が提示され、日本で検出された毒性物質が示されている。
例えば「ネギトロ」からは大腸菌群が検出され、以下のような注意事項が添付されている。
加工後に冷凍しても菌は死滅しないまま活動停止の状態になるという。激安の業務用スーパーや安さを売りにしたお寿司屋などに流通している。基本的には中国産の水産物を生で食べないことをお勧めする。
「街場の屋台や安い食堂では絶対にメシを食べないし、現地の人間が食べていることを確認してから口に入れることにしている」(某商社関係者)。
頻繁に海外出張する友人から中国の深刻な事情を聞いていた。また、近年、さまざまな食品スキャンダルが噴出する国だけに、ある程度覚悟はしていた。しかし『週刊文春』が伝えた詳細なデータは私にとっては想像以上で、背筋が寒くなった。食の安全への関心が高い読者は多いはず。記事を読み逃した向きは、ぜひバックナンバーを入手してでも読むべき内容だ。
私の自宅の近所に、某ファストフードチェーンの大型店舗がある。過日、早朝に近くを通ったところ、店舗近くの大学に通う学生たちの会話が漏れ聞こえた。
「コーヒー付きで◯△◯(具体的な商品名)が200円ってのは、ありがたいよね」
「俺は週に3~4回お世話になっている」……。
基本的に、他人の食生活のことをとやかく言うのは好きではない。だが、この何気ない会話を聞いたときも、背筋が寒くなった。なぜなら、かつて取材を通じ、このチェーンが保有する分厚い対顧客クレームマニュアルを目にしたことがあるからだ。
安い原材料を添加物や化学調味料で加工して商品を生産するため、消費者の体質や、連続で過剰に摂取した際に健康被害が出ることを企業側は知っている。
要するに、ワケアリであることを企業側が熟知している、という構図だったのだ。もちろん、ずさんな中国製食品と違い、このチェーンで提供されている商品は日本の基準をクリアしている。だが、企業本体が商品そのもののクレーム対応に関する膨大なデータを準備しているということ事態が、取材を通じてヤバいと直感した次第。
●身近な救世主
細かいことをイチイチ気にしていたら生活できない……。そんな声が聞こえてきそうだ。だが、もう少しおつき合いいただきたい。
先に、ある書店員さんから売れ行き好調だと知らされた書籍がある。タイトルは『加工食品の危険度調べました/家族が口にしている食べもの本当に安全ですか?』(渡辺雄二著/三才ブックス)。著者は食品や環境問題を長年取材している科学ジャーナリスト。
なぜ売れ行き好調なのか、同作を手に取った瞬間に理解できた。醤油や冷凍食品、清涼飲料水などどこの家庭にも常備されている食品をリストアップした上で「不可」「可」「良」「優」のランクで格付けしているからだ。「不可」については、こんな但し書きがある。
危険性の高い添加物が使われている/多くの添加物が使用され、胃や腸などに悪影響を及ぼす可能性がある。
例えば「不可」とされた食品の代表格にはカップ麺がある(本書の中では商品名も明記)。見出しはこのような形だ。
カップめんの代表格は添加物まみれの代表格
昨年、私は食品偽装や地方都市の衰退をテーマにした小説『震える牛』(小学館)を上梓した。
執筆過程では食肉の流通や食品加工の現場をつぶさに取材し、先に触れたような多数の資料本も読み込んだ。この過程で感じたのは、企業は顧客の健康よりも自分の利益を優先する傾向が強い、ということだ。原発事故しかりで、企業や国は、まずは己の権益確保を考える性質を持つ。お叱りを承知で言えば、食に関しても同じなのだ。
食に関する裏表、さまざまな知識を吸収したあと、私個人が使った対抗手段はこうだ。地元の商店街で、安全な品物を提供してくれる個人商店との関係を密にすること。
例えば、週に2~3度顔を出す鮮魚店では、店主が毎日築地に出かけ、国産の新鮮な魚介類を仕入れ、安価で店頭に並べる。刺身や煮物、揚げ物のレシピまで丁寧に提供してくれる。もちろん、怪しい添加物や人工甘味料は介在しない。
同じ要領で、精肉と野菜も入手している。換言すれば、プライドを持って商売している商店街の店主たちが私の食生活の救世主になってくれたのだ。もちろん、料理を作る手間はかかるが、自分の体と家族の健康を考えた結果、私はほぼ毎日商店街で食材を買う。
ファストフードやコンビニで買った食材は確かに便利だ。だが先に触れた書籍などを読むにつけ、手軽な食材や食事に手を伸ばす勇気はもはやない。
自作の宣伝になり恐縮だが、拙著『震える牛』は連続ドラマとして放映される。制作スタッフが座りの良いキャッチコピーを作ってくれたので、最後に紹介する。
「企業の嘘を、喰わされるな」……。[相場英雄,Business Media 誠]
取り締まりでは、ネズミやキツネなどの肉に添加物を加え、上海と江蘇省の市場で販売した容疑で1人が拘束された。犯罪組織に関与した疑いで63人が拘束され、同組織の2009年以来の取引額は1000万人民元(約1億6000万円)に上るとされている。
●ヤバい食品の凄まじい現実
『週刊文春』によると、日本には中国から年間400万トンの食糧が輸入されているという。
水産物や野菜、菓子、調味料などで、この中の多数の物品が日本の食品衛生法を違反している、というのが企画のキモ。特集では厚生労働省が摘発したリストをもとに、同誌編集部が独自調査したデータとして「活きうなぎ」「ネギトロ」のほか、「塩味えだまめ(冷凍)」など多種多様な食品が提示され、日本で検出された毒性物質が示されている。
例えば「ネギトロ」からは大腸菌群が検出され、以下のような注意事項が添付されている。
加工後に冷凍しても菌は死滅しないまま活動停止の状態になるという。激安の業務用スーパーや安さを売りにしたお寿司屋などに流通している。基本的には中国産の水産物を生で食べないことをお勧めする。
「街場の屋台や安い食堂では絶対にメシを食べないし、現地の人間が食べていることを確認してから口に入れることにしている」(某商社関係者)。
頻繁に海外出張する友人から中国の深刻な事情を聞いていた。また、近年、さまざまな食品スキャンダルが噴出する国だけに、ある程度覚悟はしていた。しかし『週刊文春』が伝えた詳細なデータは私にとっては想像以上で、背筋が寒くなった。食の安全への関心が高い読者は多いはず。記事を読み逃した向きは、ぜひバックナンバーを入手してでも読むべき内容だ。
私の自宅の近所に、某ファストフードチェーンの大型店舗がある。過日、早朝に近くを通ったところ、店舗近くの大学に通う学生たちの会話が漏れ聞こえた。
「コーヒー付きで◯△◯(具体的な商品名)が200円ってのは、ありがたいよね」
「俺は週に3~4回お世話になっている」……。
基本的に、他人の食生活のことをとやかく言うのは好きではない。だが、この何気ない会話を聞いたときも、背筋が寒くなった。なぜなら、かつて取材を通じ、このチェーンが保有する分厚い対顧客クレームマニュアルを目にしたことがあるからだ。
安い原材料を添加物や化学調味料で加工して商品を生産するため、消費者の体質や、連続で過剰に摂取した際に健康被害が出ることを企業側は知っている。
要するに、ワケアリであることを企業側が熟知している、という構図だったのだ。もちろん、ずさんな中国製食品と違い、このチェーンで提供されている商品は日本の基準をクリアしている。だが、企業本体が商品そのもののクレーム対応に関する膨大なデータを準備しているということ事態が、取材を通じてヤバいと直感した次第。
●身近な救世主
細かいことをイチイチ気にしていたら生活できない……。そんな声が聞こえてきそうだ。だが、もう少しおつき合いいただきたい。
先に、ある書店員さんから売れ行き好調だと知らされた書籍がある。タイトルは『加工食品の危険度調べました/家族が口にしている食べもの本当に安全ですか?』(渡辺雄二著/三才ブックス)。著者は食品や環境問題を長年取材している科学ジャーナリスト。
なぜ売れ行き好調なのか、同作を手に取った瞬間に理解できた。醤油や冷凍食品、清涼飲料水などどこの家庭にも常備されている食品をリストアップした上で「不可」「可」「良」「優」のランクで格付けしているからだ。「不可」については、こんな但し書きがある。
危険性の高い添加物が使われている/多くの添加物が使用され、胃や腸などに悪影響を及ぼす可能性がある。
例えば「不可」とされた食品の代表格にはカップ麺がある(本書の中では商品名も明記)。見出しはこのような形だ。
カップめんの代表格は添加物まみれの代表格
昨年、私は食品偽装や地方都市の衰退をテーマにした小説『震える牛』(小学館)を上梓した。
執筆過程では食肉の流通や食品加工の現場をつぶさに取材し、先に触れたような多数の資料本も読み込んだ。この過程で感じたのは、企業は顧客の健康よりも自分の利益を優先する傾向が強い、ということだ。原発事故しかりで、企業や国は、まずは己の権益確保を考える性質を持つ。お叱りを承知で言えば、食に関しても同じなのだ。
食に関する裏表、さまざまな知識を吸収したあと、私個人が使った対抗手段はこうだ。地元の商店街で、安全な品物を提供してくれる個人商店との関係を密にすること。
例えば、週に2~3度顔を出す鮮魚店では、店主が毎日築地に出かけ、国産の新鮮な魚介類を仕入れ、安価で店頭に並べる。刺身や煮物、揚げ物のレシピまで丁寧に提供してくれる。もちろん、怪しい添加物や人工甘味料は介在しない。
同じ要領で、精肉と野菜も入手している。換言すれば、プライドを持って商売している商店街の店主たちが私の食生活の救世主になってくれたのだ。もちろん、料理を作る手間はかかるが、自分の体と家族の健康を考えた結果、私はほぼ毎日商店街で食材を買う。
ファストフードやコンビニで買った食材は確かに便利だ。だが先に触れた書籍などを読むにつけ、手軽な食材や食事に手を伸ばす勇気はもはやない。
自作の宣伝になり恐縮だが、拙著『震える牛』は連続ドラマとして放映される。制作スタッフが座りの良いキャッチコピーを作ってくれたので、最後に紹介する。
「企業の嘘を、喰わされるな」……。[相場英雄,Business Media 誠]