「無効」とは,法律行為がはじめから効力を生じないことをいう。 「取消」とは,はじめは一応有効なものとして成立している法律行為を,取消権者が取り消すことによって,はじめから無効なものとすることをいう。

法律行為の無効・取消の共通点・・・
 法律行為が無効となる,あるいは,法律行為を取り消すという場合があります。 この無効と取消は,いずれも,最終的に法律行為によって生じさせようとしていた法律効果が生じなくなるという点においては,共通している。
もっとも,無効と取消は,法的には異なる。

効果を生じないとされる時期・・・
 まず,「無効は」,法律行為がはじめから効果を生じません。 法律行為をした時から,当然に効果が無かったものであるとされるのです。
 他方,「取消」は,はじめから効果を生じないというわけではなく,最初は一応有効なものとして効果を生じていたものの,その後,取り消す権利(取消権)を持っている人(取消権者)が取り消した場合に,はじめて効力を失うということになります。
 つまり,「無効」な法律行為は最初から効果を生じないのに対し,取り消しうる法律行為は最初は一応効果を生じているという違いがあるのです。
 ただし,法律行為が取り消された場合,取り消された法律行為は,例外はありますが原則として,はじめにさかのぼって無効なものとされます(これを遡及的無効といいます。)。
 したがって,無効であっても,取消がなされた場合であっても,最終的には最初から効力を生じないということになるので,事実上は差異がなく,理論的な違いにすぎないといえるかもしれません(ただし,理論的には大きな違いを生じます。)。

主張権者・主張期間・・・
 「無効」は,誰でも主張できます。 法律行為の当事者や利害関係人に限られません。 つまり,無効は,主張権者の限定がありません。また,「無効」は,いつでも主張できます。 つまり,消滅時効とか除斥期間のような主張の期間制限がないのです。
 これに対し,「取消」は,誰もが主張できるわけではなく,法律で「取消」を主張する権利(取消権)を与えられている主張権者のみが主張することができます。
 また,取消権が消滅時効や除斥期間の経過によって権利行使できなくなると,「取消」を主張することはできなくなります。 つまり,主張の期間制限があるのです。

追認の可否・・・
 「無効」な法律行為を追認することはできません。 はじめから効果が無いのですから,当事者が有効とすることを認めたとしても,有効とすることができないのです。
 取り消しうる法律行為は,取り消されるまでは一応有効なのですから,取消権者が取消を主張しなければ有効なままです。 つまり,その法律行為を有効とするか取り消して無効とするかは取消権者が決めることができます。
 そのため,取り消しうる法律行為については,取消権者が,もう取消はしない,有効なものとして確定するとして,追認することもできるのです。