カーキチ爺さんのなれの果てやな・・・



 CMでもおなじみの引越業界最大手「アート引越センター」創業者、アートコーポレーション(大阪市)の寺田寿男会長(64)=辞任=が、16歳の女子高生への淫行(いんこう)容疑で書類送検された。騒動で18歳のドイツ人女性との交際も発覚。“タレントの卵”だった2人が所属していた芸能事務所との間で訴訟沙汰になるなど窮地に立たされている。法廷外でも「恐喝」「銃弾」などのきな臭い言葉が飛び交い、事態は泥沼化。一代で年商700億円の大企業を築き上げた大物会長の身に何があったのか。(福田涼太郎)

「何か応援できるかも」…協力ほのめかす?

 寺田元会長と女子高生が初めて面会したのは昨年7月中旬のことだ。関係者の証言を総合すると次のような経緯だったという。

 「ミスコンテストの審査員をしている男性を紹介する」

 女子高生に、所属する芸能事務所代表の山口公義容疑者(50)=淫行容疑で逮捕=と懇意にしている女性芸能事務所社長から連絡があった。

 「業界関係者にうちの女の子を紹介してほしい」と山口容疑者は以前から女性社長に“営業活動”を依頼しており、それに応えたものだった。

 女性社長からの連絡の翌日、女子高生は女性社長と一緒に東京都内の待ち合わせ場所に訪れた。そこに現れたのが有名企業のオーナーである寺田元会長だった。

 女子高生は16歳であることや、芸能界入りを目指していることを熱く語った。 「何か応援できるかもしれない」

 寺田元会長は真剣なまなざしで訴え続ける女子高生を見つめてこう言い、電話番号を交換したという。

 初対面から1カ月が経過した8月27日。女子高生のもとに寺田元会長から電話がかかってきた。

 「遊びに来なさい」

 女子高生は寺田元会長から誘われたことを隣にいた山口容疑者に報告。山口容疑者は「言うことを聞いた方がいい」と、寺田元会長の待つ東京・六本木のマンションに女子高生を1人で向かわせた。

 室内での2人の詳しいやり取りは明らかになっていないが、寺田元会長は女子高生とわいせつな行為をし、その後、小遣いとして3万円を手渡したという。

 「『夢をかなえたい』という強い気持ちが女子高生にそうさせてしまったのだろう」

 捜査関係者は女子高生の胸の内を推察する。

 だが、女子高生を弄(もてあそ)ぶ大人は“身内”にもいた。

 寺田元会長との「行為」から1カ月もたたない9月中旬。今度は東京・代々木の所属事務所内で事件は起きた。

 「おれが女優にしてやる。みんな体を売ってのし上がっている」

 そう迫ってきたのは親代わりでもある事務所代表の山口容疑者だったのだ。

 「だまされた」と感じた女子高生はその後、事務所を去った。

 淫行から半年以上たった今年5月下旬、ようやく寺田元会長は都青少年健全育成条例違反容疑で、山口容疑者も児童福祉法違反容疑で、それぞれ立件された。


ドイツ人女性とも交際…法廷で認めた淫行

 寺田元会長が抱えている“疑惑”はそれだけでなかった。

 3月末、山口容疑者から女子高生との契約上の権利を譲り受けた別の芸能事務所の男性社長が、「『2人』が精神的ショックを受け、芸能活動を放棄した」として、契約破棄になった映画やCDの制作費など約19億円の損害賠償を求める訴訟を寺田元会長に起こしたのだ。

 「2人」…。女子高生だけではなかったのか。

 訴えの内容を見ると、寺田元会長は女子高生のほか、同じくタレントを目指していた未成年のドイツ人少女とも交際していたというのだ。寺田元会長は8回にわたってこの少女と関係を持ったといい、行為に及んだ場所は女子高生との淫行現場も含まれていた。

 訴えに対し、寺田元会長側は5月12日付で東京地裁に答弁書を提出。そのなかで「女子高生と性的行為を行ったこと。ドイツ人少女と複数回、性的行為を行ったことを認める」と回答。法廷で2人と不適切な関係を持ったことをあっさりと認めた。

 だが、原告側の請求内容に関しては、山口容疑者から男性社長の芸能事務所への権利譲渡や、映画制作などの契約がすべて架空のものだったと反論、全面的に争う姿勢を示している。

 さらにアート社も「継続的に第三者から寺田元会長に恐喝行為があった。提訴は恐喝の一環で損害賠償請求は不当」と、提訴自体を問題視する主張を展開している。

 対する男性社長の事務所の渉外担当者も一歩も退かない。

 「所属タレントを使い物にできなくされ、進行中のプロジェクトもだめにされた。『知らない』というのは上場企業のトップとして人間性を疑う」


「恐喝」「銃弾」…場外戦もエスカレート

 アート社が主張する「恐喝」とは何か。

 関係者によると、寺田元会長は山口容疑者から淫行の事実を突きつけられ、ドイツ人少女の学費や女子高生との示談金名目で、計2千万円以上を支払っていたのだという。

 寺田元会長側がいう「恐喝」は、女子高生への淫行直後から数回にわたって行われ、昨年12月に山口容疑者から権利を譲り受けたという男性社長からも、さらに金銭の要求があったという。耐えきれなくなった寺田元会長が山口容疑者らを恐喝容疑で大阪府警に刑事告訴している。

 寺田元会長は答弁書で、昨年9月に女子高生との間で示談が成立したことを主張している。だが、原告側の渉外担当者は「(示談金として)山口容疑者に金銭を支払っていたことなんて聞いたことがない。示談が成立したことも知らない」と言い分は真っ向から食い違っている。

 さらに提訴後、原告側の男性社長や顧問弁護士らのもとに銃弾入りの封筒が届いたという。「恐怖を感じた」(渉外担当者)と顧問弁護士が、第1回口頭弁論を前に原告側代理人を辞任。銃弾の提出を受けた警視庁は送り主を調べるなど捜査を進める方針だ。

 これに関してアート社は「銃弾の件は知る知らない以前の問題。反社会的勢力との関係を利用するようなことは一切やっていない」と関与を全面的に否定している。


今後も増える“肉弾営業”!?

 警視庁少年育成課によると、女子高生は小学3年のころから芸能界入りを目指して俳優養成学校に通っていたという。昨年5月にJR渋谷駅のハチ公前で山口容疑者からスカウトされ、同容疑者の洗濯など身の回りの世話をしながら夢をつかもうとしていた。

 「テレビ番組に出してあげる」

 甘い言葉で2人を誘ったと主張する男性社長側に対し、寺田元会長側は「そんなことは言っていない」と否定している。

 芸能界でまことしやかに囁(ささや)かれてきた“肉弾営業”は公然のものなのか。

 芸能評論家の肥留間正明氏は、寺田元会長の行為を厳しく非難した上で女子高生にも「『体を使って芸能界に入る』というのは間違った考え方。男の下心に応じてはいけない」と指摘。さらに、こうした行為が氷山の一角であるとし、さらに増えていく可能性もあるという。

 「以前はタレントを目指す少女らが企業の社長と直接の接点を持つ機会なんてなかったが、今は芸能界と一般の境界がなくなってきている。しかも互いの“望み”の気持ちが一致していることもあり、この先も同じケースは増えるのでは」(肥留間氏)

 大企業トップのまさかの不祥事。影響はさまざまな方面に及んだ。

 寺田元会長の妻、千代乃社長(63)は、児童への性的被害根絶を訴える日本ユニセフ協会の大阪支部理事を務めていた。夫が未成年に対して“失態”を起こしたことで、同支部は7月末をもって理事職の辞任を求める方針だ。

 同支部は「いろいろ協力してもらっていたので残念だが仕方がない」と肩を落とす。

 また、事件が公になった直後の6月4日に寺田元会長自身も会長職を辞任。経営から完全に身を引いた。

 寺田元会長といえば、千代乃社長と二人三脚で事業を拡大し、一代で業界トップクラスの会社に育て上げた企業人としても有名だ。そのサクセスストーリーはテレビドラマにもなり、千代乃社長は藤原紀香さんが演じたことでも話題になった。しかし、この先も事態が泥沼化すれば企業のイメージダウンは避けられない。沈黙を守る千代乃社長の心中はいかばかりか。

 少女の気持ちを逆手に取った危険な火遊びの代償はあまりにも重い。