【NEWS】TPPに猛反発 対応策検討 2010年10月22日 14時57分
 政府が参加を検討している、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に対し、十勝管内農業関係者が猛反発している。経済連携協定(EPA)や自由貿易協定(FTA)などと異なり、特定品目を関税撤廃の例外措置とするための交渉が難しいとされ、締結すれば「日本農業壊滅は誇張でもなく現実的な話」(JA道中央会帯広支所)と見ているからだ。年間農業産出額が2500億円で農業が基幹産業の十勝では、関連産業のすそ野も広く経済活動全体への打撃も必至。「状況次第でオール十勝での何らかの行動も必要」(同)としており、十勝地区農協組合長会は28日の農産対策委員会(辻勇会長)で情報交換を行い、対応策を検討する。

 TPPには、菅首相が1日の所信表明演説で「参加を検討する」と表明。11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)に向けて政府内で論議が行われている。この中でJA全中は19日、全国大会で「農家所得が補償されても輸入は増大し、国内生産のみならず関連産業、地域の雇用も崩壊する」などと反対決議をした。

 2007年2月に農水省が経済財政諮問会議に提出した、国境措置を撤廃した場合の国内農業等への影響(試算)では、農業生産は約3・6兆円減、食料自給率は40%から12%に低下するとしている。道庁では日豪EPAで食料の関税が撤廃された場合、北海道経済への影響は1兆3716億円に達し、拓銀破綻(はたん)を上回ると試算しているが、JA北海道中央会帯広支所の小南裕之支所長は「EPAよりもさらに厳しい状況に追い込まれることは間違いない。巨費を投じて所得補償するといっても農業を守れるとは思えず、財源確保も疑問だ」と警戒する。

 管内生産者側は一斉に反発。十勝地区農協組合長会の有塚利宣会長は「非常に強権的な、十勝・日本の農業が壊滅する内容。黒船以上のインパクトだ」と最大限の懸念を表明。管内の農協幹部も「TPPを締結すれば、それ以外の国とのEPAやFTA交渉もなし崩しになる」とTPP締結国以外との関税撤廃につながる危険性を指摘する。

 音更町の酪農家でJA北海道女性協議会の河田さえ子会長は「19日に上京して話を聞いてびっくりした。2年連続で作柄が悪かったために女性部の研修旅行を諦める人がいるほどなのに、TPPとなれば農業自体生き残れるのか。米国、豪州などの乳製品が入ってくると私の家もやっていけない」と話す。

 07年の日豪EPA、09年の日米FTA交渉に際して、十勝では3000人集会を開催、締結阻止を訴えた経緯がある。有塚会長は「内容を早く農業者らに伝え、世論喚起が必要と判断すれば、行動を取らなくては。その際には農業だけでなく、関連事業者・団体挙げて阻止しなくてはと思っている」と語った。経済界でも「農業の弱体化となれば、十勝経済に大きなマイナス」(帯広商工会議所の高橋勝坦会頭)として、農業団体の動きと共同歩調を取る考えを示している。

【TPP】環太平洋戦略的経済連携協定。Trans Pacific Partnershipの略。例外品目を基本的に認めない関税撤廃を目指す自由貿易協定で、現在、シンガポール、ブルネイ、ニュージーランド、チリの4カ国が参加している。参加の意向を示した米国、豪州、ペルー、ベトナム、マレーシアの5カ国が交渉中。米国は来年秋までの妥結を目指しているとされる。参加すると即時関税撤廃を基本に、10%の品目で10年間かけて段階的に関税を撤廃する。日本がメキシコなどと結んでいる2国間のEPA(経済連携協定)は農畜産物を中心に例外品目を10%認める内容で農業が守られている。